強引上司とオタク女子
そ、そうか。
じゃあ、国島さんが私の初彼ってやつなの?
こんな強引で手の早そうな人が?
いやーん、なんかイメージと違う。
初彼って、もっと爽やかで、手を握るにもドキドキして……みたいなイメージなのに。
「少女漫画の読み過ぎだ」
「はっ?」
「口に出てたぞ。謎の妄想」
「ちょ、ヤダっ」
口を抑えて彼をちら見する。
私と彼の身長差は、二十センチくらいだから、丁度彼の顎から唇にかけてが目に入る。
不意に、数日前のキスを思い出して、顔から火が出そうになった。
「あ、なんかエロい想像しただろ」
「してません!」
「嘘つけよ。お前ホント面白いよな。経験ないけど興味はあるって感じだろ」
「人のこと勝手に決めつけないでください!」
「はいはい、でもな。俺達の歳ってこれくらい当たり前にできっから」
ひょいと手を握られて、歩き出した国島さんに引っ張られる。
「しませんよ! 社会人が手を繋いで出勤とかないでしょ」
「あんまりしないが、できるかできないか聞かれたら、俺はできる」
「しなくていい!」
恥ずかしくって、勢い良く手を離す。
牛みたいに「もうもう」言いながら先を行くと、楽しそうな声が追いかけてくる。
「ポストに拝むのより恥ずかしくねぇだろうよ」
うもう、うるさいよ、国島さん。
睨んでも効果はない。彼は平気な顔で隣によってきた。