強引上司とオタク女子
最寄り駅について、ほぼ密着状態だった電車を降りる。
ホッとしたのと同時、恥ずかしさのあまり顔も見れそうになく、私はかけ出した。
「おい」
「先に行きます!」
とにかく今は逃げたい。
そりゃ今までキスされたりもしたけれど、どれも突然で構える暇などなかったし。
いざこの人が私の彼氏だって思ったら、近くに居られるだけで妙に恥ずかしくてたまらない。
「無理だろ、リーチ的に」
あっさり改札で追いつかれた。
ぐぬう、悔しい。私ばっかりテンパってて、国島さんはなんでこんな余裕なんだ。
「あっさり追いついて来ないでくださいよ!」
「んなこと言っても。なんで同じ会社に行くのに別々に行かなきゃならねぇのかが分からない」
「恥ずかしいからですよ!」
「恥ずかしい……ねぇ」
国島さんが不満そうにつぶやく。
だってさ、もうここ最寄り駅だもん。そろそろ会社の人とも出くわすよ。
「……ってことでお先に」
言い逃げしようと思ったら再び腕を掴まれた。
「なんなんですか!」
「逃げるからだろ。余計目立つ。……てか、なんで恥ずかしいんだ?」
真顔で返されて、しばし考える私。
あれ?
普通恥ずかしくない?
恋愛経験豊富な人は平気なものなの?
私、ぼっち生活26年だったから普通が分からない!