柚と柊の秘密






「戸崎さん、聞いてる?」




山形の声でふと我に返った。

俺、何ボーッとしてたんだ。




「わ……悪ぃ、どうした?」




慌てて山形に聞く。

すると、山形はまた少し頬を染めて俺に言った。





「あたし、映画の前売り券二枚買っちゃって。

もし良かったら、明日一緒に観にいかない?」



「……は?」




いきなり何だよ。

デートの誘いか?




……よく考えろ、俺。

俺は今、柚だ。




一人で心の中でツッコむ。

山形、俺様を呼んで、恋愛相談の続きでもするつもりか?




だけど……




「行く」




なぜかそう答えていた俺。

山形の誘いなんて断ってしまえばいいのに。

なのに、誘われて嬉しい俺がいた。

やっぱり俺、おかしい。

頭のネジが吹っ飛んだか。





山形は嬉しそうに俺を見た。

その笑顔を見て胸がドキンといったのは、言うまでもない。




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