柚と柊の秘密
健吾君と近くの定食屋に入った。
学校からも近く、よく男子がたまっている店だ。
あたしは今まで入ったことがないが、柊は男友達と頻繁に来ている様子。
いずれにせよ、デートで来るような店ではない。
まさかこの店に入ることになるなんて。
暖簾をくぐると、
「いらっしゃーい」
威勢のいいおじさんの声が聞こえた。
健吾君は奥の座敷に上がり、背中にかけていたギターを隣に置く。
あたしはその前に座った。
ドキドキドキドキ……
鼓動が速い。
健吾君と二人きりだから。
嬉しいの?
それとも、逃げたいの?
どうしたいのかすら分からない。
だって……
健吾君のことが気になるけど、健吾君と仲良く話なんて出来ないから。
話しかけられると、ウサギみたいに怯えてためらってしまうんだ。