柚と柊の秘密





「戸崎!」




健吾君の声で我に返った。

そして、




「ははははぃ!!」




変な返事を返すあたし。

あたしの声は醜く裏返り、定食屋中に響きわたる。

数人の客があたしを見て、顔を歪ませた。





もぉ、恥ずかしいよぉ。

ただでさえ変人なのに、健吾君の前じゃ空回りばっかり。

あたし、柚じゃないのに。

柊なのに。

だから、変な緊張しなくていいのに。

今はもちろんデートじゃないし、健吾君だってそんな気ない。

落ち着けあたし、落ち着けあたし。

食べられないなら残せばいいだけじゃん!





必死で自分に言い聞かす。

そして、ようやく呼吸が落ち着いてきた時……

この世で最大のピンチがあたしに訪れた。




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