柚と柊の秘密






「戸崎」




健吾君はこっちを見て、静かにあたしを呼んだ。

あたしはヒレカツ丼のカツを箸で挟んだまま、健吾君を見る。

視線がぶつかり、ドキンとする。

……いろんな意味で。






健吾君が好き。

それは確かなんだ。

胸が熱くて、ぎゅっとして。

出来たらその手を握りたいなんて思ったりして。

だけど、それだけじゃない。

なんだか嫌な予感がした。

……なぜだか分からないけど。







「な……なぁに?」




必死で平静を装うが、やっぱりあたしの声は震えている。

こんなあたしをしっかり見たまま、健吾君は続けた。




「お前、どういうつもりだ?」



「え?」





何が?

何に関して?

もしかして、健吾君にバレちゃったんかな、あたしの気持ち。

そうだよね。

きっと顔は真っ赤だし、モジモジしてるし。

柊、男性でもいけると思われたんだろうな。






自己完結に至る。




だけど……

あたしは甘かった。

健吾君には確かにバレていた。

……もっと重大なことが。




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