柚と柊の秘密
ニコニコしながら、腹黒いことを考えていた俺。
こんな俺に向かって、柳はゆっくりと言葉を吐いた。
「許してやるも何も……
あいつ、勝手に逃げ出したから」
「は?」
「俺はまだ言いたいことがあった」
こいつ……
あれだけ柚を泣かせておいて、まださらに酷い言葉を浴びせる気だったのか。
極悪非道の奴め!
だけど、冷静に冷静に。
ここで柳を刺激しても、何の得にもならない。
柳はその冷めた目で、俺を見た。
居心地が悪い。
柚も大変だっただろう。
こんな奴に掴まって。
「ま……あれだな」
俺は苦し紛れに吐く。
「文化祭終わったら、必ず元に戻るから。
それに、柚、ギターの才能あるだろ?」
「……」
「柚も頑張ってるし、仲良くしてやってな」
そう軽いノリで言って、柳の肩をパンパン叩いた。
俺はめちゃくちゃ愛想笑いしてるっつーのに、柳はにこりともしない。
はぁー、ほんと扱い辛い奴だよ。
だけど、これで何とかなるだろうな。
幸いにも柳は口が固そうだし。
周りに言うつもりもなさそうだし。
俺様グッジョブ!
さ、こいつとはもうおさらばだ。
俺が去ろうとした時……
「うぜぇんだけど」
柳がポツリと呟いた。