柚と柊の秘密





「ごめんなさい……

ごめんなさい……!!」




ひたすら謝るあたし。

健吾君の前で泣きたくなんてないのに、濡れた頬をさらに涙が伝う。




「あたしのせいで……」



「落ち着け」




健吾君の静かな声が聞こえ、手をぎゅっと握られる。

温かくて大きな手。

触れていると、何だか安心する。




健吾君、やめてよ。

いつも冷たかったのに、急に優しくしないで。

あたし、健吾君のことを諦められなくなる。





「……酷いよぉ。

色んな意味で酷い」




思わず口走っていた。




「酷い?……俺が?」




健吾君の言葉で我に返り、咄嗟に否定する。





「ごっ……ごめん!

あたしが酷いんだよぉ」





あたしの馬鹿。

何てこと言ったんだ。





だけど健吾君は、




「……そうだな。

俺が酷かった」




あたしの手を握ったまま、静かに告げた。

その言葉があたしの心を震わせ麻痺させる。

新たな涙が溢れ出るのをぐっと我慢する。




< 161 / 363 >

この作品をシェア

pagetop