柚と柊の秘密
「柊がいると心強いな。
ライバルのグループもみんな上手みたいだから」
優二君は嬉しそうに言う。
他のグループもみんな上手いんだ。
それなら余計下手は出来ないよね。
あたし、頑張らなきゃ。
「一番注目されてるのは、三年生の男女のグループ。
プロ入り目指してるんだって」
「へぇー。すごいなぁ」
素直に感激する。
プロ入りだなんて、本当に上手なんだろう。
そんな人と比べられるの、ちょっと怖いよぉ。
だけど優二君は浮かない顔をしていて。
「ただ、バンド内で恋愛があってゴタゴタしてるんだって」
ギクリとする。
「面倒いし無理だよなー、そういうの。
うちは全員男でよかったよ」
何も言えなかった。
ただ、首を縦に振ることしか出来なかった。
あたし、浮かれていて何も考えていなかった。
健吾君と両思いになる以前に、いけないことだったんだ。
グループ内恋愛とか、迷惑だよね。
気を引き締めなきゃ。
あたしが柊になっているのは、健吾君と付き合うためじゃない。
文化祭に出るためなんだ。
必死にそう言い聞かせたけど、やっぱり胸が痛くなる。
あたしの恋愛、晴れのち雨。