柚と柊の秘密
「さっすが柊!」
優二君は満面の笑みを浮かべて。
そんな優二君を見ると、あたしもにやけてしまう。
嬉しいな、みんなが喜んでくれるなんて。
あたしは健吾君を見た。
健吾君は困ったようにあたしを見ていて。
そんな健吾君に、あたしも満面の笑みを送っていた。
「やっぱうちのバンド、いいよなー。
いい奴らばっかりだし、イケメン揃いだし」
優二君がしみじみと言う。
「それに、恋愛のゴタゴタもないし」
あ……そうだよね。
固まってしまうあたし。
胸がバクバクいう。
「先輩のバンド、大変そうだもんな。
恋愛のせいで仲悪くなるなんて、馬鹿馬鹿しいよな」
「そ……そうだよね」
あたしの声は震えていた。
忘れそうになっていた。
だけど、忘れてはいけない。
あたしは柊。
健吾君に恋してはいけない。
いや……
この恋心は止まらないから、知られてはいけない。
秘密の恋。
あたし、秘密だらけだな。
怖くて健吾君を見ることが出来なかった。
健吾君もきっと、優二君と同じ考えだから。
あたしのこの気持ちは、健吾君にとっては迷惑でしかないんだ。