柚と柊の秘密
勢いよく扉を開き、プール側へ出る。
すると、俺の耳に何やらがやがやした声が飛び込んできた。
間違いない、奴らはこの辺りにいる。
モップの柄を強く握る。
そして、声のする方へ急いだ。
ジャー……
水が流れる音がする。
そして、大勢の男女の笑い声。
近付くにつれて、会話がはっきりとしてくる。
「あんたが悪いんだよ。
戸崎柚の味方ばかりするから」
「……」
「本当は戸崎を苦しめたいんだけど、ウザいあんたから潰す」
シャワールームが近付く。
人影がちらりと動いた。
「なんか言いなよ。なに、その目」
相変わらず、シャワーの音が響いている。
「あたしに歯向かうの?
あたしの父親はこの学校の理事長。
いじめなんて揉み消してくれるし、あんたなんて簡単に退学に出来る」
シャワーの音に負けないくらい、勝ち誇った浅井の声が聞こえてくる。
「怖いなら、土下座して謝って。
そして、あたしの言うことを聞きな」