柚と柊の秘密
怒りの炎に燃える俺は、きっとすごい形相をしていたのだろう。
「ヤバくない、あれ」
浅井の後ろの女子たちが、ひそひそと話す。
「戸崎柚、キレたらおっかねーもんな」
男子もそんなことを言う。
いつの間にか俺は、柚をキレたらおっかねーキャラにしていたらしい。
だから、浅井は直接のターゲットを山形に変えたのかもしれない。
それに便乗した俺。
血走った目で奴らを睨みつつ、モップを振り上げる。
そして、勢いよく浅井の取り巻きに振り下ろした。
「うわっ、やべー!」
「きゃあっ!」
奴らはこんな情けない声を出し、散り散りに逃げていった。
分かっている。
奴らは本当は弱いってこと。
弱いから、集団になって俺たちをいじめる。
それに、浅井に対する忠誠心もこれほどなんだ。
醜い。
マジで醜い。
「……っ!」
浅井は唇を噛んで俺を見た。
そして、
「戸崎柚。覚えてろよ」
悪役さながらの捨て台詞を吐いて去っていった。