柚と柊の秘密
あたしが立ち上がった時、
ドンッ!
その性格悪いプロ入りグループの男性が、あたしの肩にわざとぶつかる。
思わずよろめくあたし。
ウィッグがずれそうで、とっさに頭を押さえた。
こんなあたしの上に、敵意に満ちた男性の声が降り注ぐ。
「なぁ、お前の父親、あのFの碧なんだろ?」
「……それが何か?」
正直、お父さんの話題を出されたくない。
あたしとお父さんは全然違うし、お父さんのせいでハードルを上げられるのも辛い。
だから、お父さんの話題は極力逸らそうとそう言ってしまったのだが、それが余計相手の闘争心に火を点けた。
「顔が良くて父親も有名で、お前はいいよな。
下手でも許されるんだろうな、二世とか言って」
何その言い方。
確かに、お父さんのツテを借りたらプロ入りだって出来るかもしれないよ?
優弥おじさんとかいるから。
でもね、あたしはそれに甘んじたくないと思ってるんだ。
あたしはあたしの力で頑張る。
この文化祭を頑張る!
だけど、そんなこと言えなくて。
あたしは頭を押さえたまま、先輩を見上げた。