柚と柊の秘密
話しかけてきた奴を無視して、弁当を広げる。
すると、
「うわー!超美味しそう」
「柚のお母さん、料理上手いねぇ」
なんて言われる。
今までてめーらがこの美味い弁当をひっくり返してきたんだろ。
俺は無視し続けて、唐揚げを口に放り込んだ。
こんなとき……
「あ、戸崎さん」
俺を呼ぶ声が聞こえた。
この学校でただ一つ、俺を癒してくれるその声。
もちろんこいつは山形だ。
俺は席に座ったまま、顔を上げて山形を見る。
山形はいつもの柔らかい笑顔を浮かべて俺を見ていて。
心の氷がすーっと溶けていくようだった。