柚と柊の秘密





だけど、




「戸崎さん、おはよう」




階段の上から俺の大好きな声が聞こえて。

俺の天使が降りてくる。

その色気のないショートカットも、ペチャパイも、化粧っ気のない顔も、今では全てが魅力的だ。

恋の力って恐ろしい。

俺の頭、狂ってる。






俺はドキドキする気持ちを押さえ、




「あ、山形。

どこ行くのか?」




なんて聞いていた。




俺、ストーカーかよ。

山形の行動一つ一つが気になる。

だけどこんな俺の心の内なんて知らない山形。

ひらひらとスカートを翻し、




「友達に本を貸しに行くの」




なんて言う。




「どんな本?」




気になる俺はすかさず聞く。

すると、山形は赤くなって意外な本を見せてくれた。





黒色の表紙に、『Fと俺と』という白い文字。

そして『遠藤優弥』という名前。

……そう、それはお父さんのグループのリーダー、優弥おじさんが昔出版した自伝なのだ。



< 271 / 363 >

この作品をシェア

pagetop