柚と柊の秘密
だけど、
「戸崎さん、おはよう」
階段の上から俺の大好きな声が聞こえて。
俺の天使が降りてくる。
その色気のないショートカットも、ペチャパイも、化粧っ気のない顔も、今では全てが魅力的だ。
恋の力って恐ろしい。
俺の頭、狂ってる。
俺はドキドキする気持ちを押さえ、
「あ、山形。
どこ行くのか?」
なんて聞いていた。
俺、ストーカーかよ。
山形の行動一つ一つが気になる。
だけどこんな俺の心の内なんて知らない山形。
ひらひらとスカートを翻し、
「友達に本を貸しに行くの」
なんて言う。
「どんな本?」
気になる俺はすかさず聞く。
すると、山形は赤くなって意外な本を見せてくれた。
黒色の表紙に、『Fと俺と』という白い文字。
そして『遠藤優弥』という名前。
……そう、それはお父さんのグループのリーダー、優弥おじさんが昔出版した自伝なのだ。