柚と柊の秘密




否定されることは分かっていた。

だけど、やっぱり胸が痛む。

ただごめんなさいと呟くあたし。

柊みたいに口が達者だったら、優二君を納得させることが出来たかもしれないのに。

現に、屋上で優二君は柊の言葉に首を縦に振っていた。

……のに、やっぱりあたしを目の前にすると、許せないという感情が湧き出てくるのだろう。






怖くて優二君が見れない。

ひたすらあたしは俯いていた。







「君、知ってるよね。

別のバンドで恋愛沙汰になってること。

だから、メンバーに女がいると迷惑なんだよね」




分かってる、分かってるよ!

あたし、嫌というほど考えた。

でもね……

あたしが女だという事実は変えられないし、健吾君も嫌いになれない。

どうすることも出来ないんだ。

だから、秘密の恋をしてるんだ。

叶うはずもない、秘密の恋を。




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