柚と柊の秘密





「里穂ちゃぁん」




俺は甘い声で彼女を呼び、身を寄せる。

案の定里穂ちゃんは赤くなって、俺にしがみつく。

その隙に、ポケットの中に手を入れ、中を探る。

だけど目当てのものはなくて。





やべぇ!

はやくしないと!!




そう思うたび焦ってしまって。







「戸崎さん?」




里穂ちゃんが俺に身を寄せたまま、上目遣いで俺を見る。

そして、その可愛い顔で天使みたいな笑みを浮かべながら、こう言った。




「ここにあるわけないじゃん。

戸崎さんも単純だね」





……くそ、ふざけやがって。

この女、見た目ほど馬鹿そうではない。

現にこうやって俺様を手玉に取って。






あたふたしている俺。

そんな俺に、さらなる地獄が降り注ぐ。





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