柚と柊の秘密
教室に戻ると、山形の姿を見つけた。
相変わらず化粧っ気がなくてペチャパイだけど、今の俺には天使に見える。
この、俺にしがみついている小悪魔をどうにかしないと!
「山形!」
俺は山形を呼んだ。
山形と話がしたい。
俺が山形の近くにいられるのも、あと少しなんだから。
だから、こんな小悪魔に振り回されていてはいけないのに。
なのに、山形は俺を見て、複雑な顔をする。
里穂ちゃんが俺にしがみついているからに違いない。
山形は困った顔のまま、
「どうしたの?戸崎さん」
俺に聞く。
焦る俺の頭は麻痺していて。
強行突破しようと試みる。
「あのさ、山形。
今日放課後……」
デートに誘おうと思ったのに、
「駄目だよ」
里穂ちゃんがすかさず俺に言う。
俺は血走った目で里穂ちゃんを見る。
それでも里穂ちゃんは怯まない。
俺の弱みを握っている里穂ちゃんは強い。
「戸崎さん、あたしのだから」
山形に向かってそう言う。
「あたし、戸崎さんと付き合ってるんだ」