柚と柊の秘密






「柚!」




健吾君に呼ばれて、ビクッと飛び上がる。

心臓がバクバクと鳴り、身体が震える。




強がっていたけどね、本当は悲しいし寂しいよ。

あたしが柚だと知った瞬間、優二君はあたしを突き放した。

女がいると面倒だから。

だから、もちろん健吾君を好きなことも悟られてはいけない。

……悟られてはいけないんだ。







それなのに、健吾君があまりにも優しい目であたしを見るから。

だから、涙腺が緩んでしまって。

泣いてはいけないと思っていたのに、あたしの頬を涙が伝う。






健吾君はあたしが憎くないの?

どうしていつもあたしの味方をしてくれるの?

それに……

こんなあたしと、プロを目指そうって言ってくれたの?




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