柚と柊の秘密
「そういえば、柊のライブ、何時からだっけ?」
何気なく里穂ちゃんに聞く。
すると俺を見上げ、いたずらな顔で笑う。
「柊君じゃないでしょ?
柚ちゃんでしょ?」
……うぜー。
マジでムカつく。
こいつが俺の弱みを握っていなかったら、コテンパンにやってやるのに!
俺は引きつった笑顔を作る。
そして、
「絶対観にいかないとなー」
そう言うと、
「柊君の坊主がかかってるもんね」
どこまででも腹立たしい里穂ちゃん。
里穂ちゃんは俺に腕を絡め、身を寄せて続ける。
「あたし、坊主とかやだなー。
だから、柚ちゃんに頑張ってもらわないと」
なんだよそれ。
俺だってやだよ。
でも……
山形は坊主でもいいって言ったよな。
好きな奴は容姿ではないって。
こんな時まで山形のことを考えてしまう。
里穂ちゃんと山形を比べてしまう。
そして、確信する。
俺は、山形じゃないと駄目だと。