柚と柊の秘密
こんな訳で、楽しくもないのに、俺は里穂ちゃんと文化祭を回った。
焼きそばを食べたり、劇を観たり。
俺は鎖に繋がれて散歩されている犬の気分。
そして、やっぱり山形はいなくて。
……待てよ、山形がいても、この状況じゃどうにもならないじゃん。
何とかして、里穂ちゃんを巻かないと!
里穂ちゃんがいたら、告白どころじゃない。
頭をフル回転させた。
どうすればいいんだろう。
どうやって逃げよう。
こんな惨めな俺の前に、ようやく神が舞い降りる。
俺は目の前の店をしかと見つめる。
これしかない!
「なぁ、里穂ちゃん」
俺は里穂ちゃんに笑顔で言う。
「お化け屋敷行かね?」
里穂ちゃんは俺にしがみついたまま、
「えーっ、怖いッ」
口を尖らせる。
怖いのはてめーだよ、なんて言葉が口元まで出かかる。
でも、
「中は暗いからひっつけるよ」
耳元で囁く。
案の定、里穂ちゃんは真っ赤になって。
俺の腕をさらにぎゅっと抱きしめた。