柚と柊の秘密
山形まで、あと十メートル……
鼓動がさらに速くなる。
あと五メートル……
身体の中心が熱い。
あと三メートル……
沸騰しそう。
そして俺は手を伸ばし……
「山形!」
愛しい女の背中にそっと触れる。
少ししか触れていないのに、俺の手が焼けてしまいそう。
たいした女だ、山形は。
山形はゆっくりと振り返り、俺を見て目を丸くした。
この、驚いた表情すら愛しい。
そして、
「戸崎さん、どうしたの?」
俺の大好きな声でそう聞く。
数日話していないだけで、すごくしんどかった。
山形の声を聞いたら安心した。
俺、おかしいな。
いつからこうも山形に惚れていたんだろう。
山形ばかり気にしていたんだろう。