柚と柊の秘密
最後のチューニングを終えた。
体育館は暗くなり、あたしたちの出番を待つ。
「柊く~ん」
まだ始まってもいないのに、柊、いやあたしを呼ぶ声が聞こえる。
開始まで、あと三分二十秒……
三分十秒……
三分……
三分を切った時、急に心臓が悲鳴を上げ始める。
頭の中を悪い妄想が流れていく。
大きなミスをした。
みんなが笑っている。
ウィッグが取れて柚だとバレる。
みんなが引いている。
優二君が怒る。
健吾君に嫌われる……。
嫌だ、そんなの嫌だ。
ステージに上がるのがすごく怖い。
なんで……
なんでこんな役引き受けてしまったの?