柚と柊の秘密
そして……
「柚」
あたしの大好きな声で名前を呼ばれ、手をぎゅっと握られた。
それだけで、真っ暗な妄想が少しだけ明るくなる。
目の前に、あたしの大好きな健吾君の顔があって。
相変わらず優しい瞳であたしを見つめていて。
胸がじんわりと温かくなる。
「こんなこと言ったら、優二が怒るが……」
健吾君はそう言って、あたしの手をさらに強く握る。
ドキドキドキドキ……
相変わらず鼓動は速い。
だけど、五感ははっきりしていて。
健吾君の手の温かみ、健吾君の香り、健吾君の優しい笑顔をしっかりと感じる。
そして、もちろん、健吾君のその声も。
「柚。俺は柚が欲しい。
才能があるからだけじゃない。
柚だから欲しいんだ」
「え……」