柚と柊の秘密
暗い体育館に、女子生徒の声が響いていた。
「はじめは柊君のバンドだよ?」
「柊君、ギター弾いてる姿、絶対カッコイイよね」
「また柊君の人気が上がっちゃうよ」
正直、それが目当てだった。
モテるために、柚に俺のフリをさせた。
だけど、今はどうでもいい。
どんな美女よりも、素朴な山形がいいんだ。
「戸崎、人気だね」
そう言う山形の顔が見たくて。
でも、照明が暗くてはっきり見えない。
山形はなにを考えているんだろう。
俺がモテても、何も思わないんだろう。
そう思うと腹が立ってきて……
というより、焦ってきて。
「柊、もうモテなくていいって言ってた」
俺は山形に言っていた。