柚と柊の秘密






「戸崎さん、ギター、上手だったね」




あたしは小柄な女子生徒に話しかけられた。

長い髪に、お人形のような顔。

きっと、柊好みの女の子だ。




「うん、柊、上手だったよね」




そう言ったのに、彼女はあたしを見て笑う。




「柊君じゃない、あなたでしょ」



「え……」




あたしは、穴が開くほど彼女を見つめる。





この子、気付いてたんだ。

あたしと柊が入れ替わっていたの。

どうしよう、なんて弁明すればいいの?





困るあたしを見て、彼女は笑う。




「大丈夫、あたしだけしか知らないから」




そう言って彼女は自分の名前を告げた。

里穂ちゃんだと。




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