柚と柊の秘密
仕方なく教室に戻った。
このまま怒って消えたら、奴らの思う壺だと思ったから。
俺が入った瞬間、静まり返る教室。
あからさまに机を離す奴。
足を引っ掛けて転ばそうとする奴。
真帆ちゃんと春菜ちゃんは相変わらず目を合わせようとしてくれないし。
惨めな俺は、べっとり付いている青い絵の具を拭く。
くそ、浅井め。
俺の導火線に火を点けたな。
悪いけど俺はこんなことではへこたれない。
十倍返ししてやる。
イライラしながら机を拭く俺を、クラスの奴らは笑って見ていた。
みんな、薄情者だな。
クラスメイトよりも浅井を取るのかよ。
心の中でほくそ笑んだ時……
「戸崎さん」
さっき話したばかりのあの声が聞こえた。