柚と柊の秘密
女にしては少し低く、ハスキー。
俺はいつもこいつに罵られていた。
だけど今は……
「あたし、椅子拭くね」
山形はそう言って弱々しく笑う。
あの強情な山形の泣きそうな笑顔。
ちょっと、山形!
そんな顔するんじゃねーよ。
お前にはそんな顔、似合わないよ。
「いいよ。一人でやるから」
俺は無理矢理山形から椅子を奪い取る。
だけど、山形は意地でも離さなくて。
その白いブラウスに、青色の絵の具が飛び散る。
そんな俺たちを見て、嘲笑うクラスの奴ら。
はぁ。
やばいな。
この仏の戸崎柊の堪忍袋の緒が切れそう……