柚と柊の秘密
「ふざけんな、てめぇら」
俺は低い声で凄んでいた。
クラスの奴らがざわっとなって俺を見る。
やべー。
さすがにバレた?
だけど、止められない。
俺がさらに口を開こうとした時……
「確かに戸崎柊とは犬猿の仲だよ。
でも、戸崎さんは関係ないじゃん」
山形の冷静な声が響き渡った。
「あんたたちにはがっかりだよ」
そう吐き捨てた。
そして、
「行こっ、戸崎さん!」
俺の手をぎゅっと掴み、引っ張る。
山形なのに。
オトコオンナ山形なのに。
なんで俺、どぎまぎしてる?
俺、アタマおかしくなってしまった?
強がっていたのに、山形は全身で震えていた。
本当は怖かったのだろう。
平穏に過ごしたかったのだろう。
それなのに、俺とともにいじめられる道を選んでくれた。
山形……
お前、思っていたよりずっといい奴なんだな。
なぜだか分からないが、その華奢な手をぎゅっと握っていた。
俺の心に桜色の嵐が吹き荒ぶまで、あと少し。