柚と柊の秘密







あたしはぽつんと屋上にいた。

秋の風があたしの茶髪チャラウイッグを揺らす。

ウイッグが飛んでいきそうになり、慌てて押さえた。





はぁー、何やってんだろう。

サッカー部の練習から逃げて、ギターやらなきゃと思って、あたしはこんなところにいる。

赤色のギターを持つ手。

そこには、既に傷が出来ていた。

血が出るまで頑張ったのに……

思うようにはいかない。

お父さん、すごく簡単そうに弾いてたよな。

お父さんだけじゃない。

ボーカルとギターを担当する健吾君も。

あたしのほうが難しいパートなのに、健吾君のほうが数百倍上手い。

柊、何でこんな無謀な誘いを受けたんだろう。

一ヶ月で四曲完成とか無理だよ?




あたしはため息をついていた。




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