柚と柊の秘密
だけど……
「こんな傷んだ弦張ってたら、切れるに決まってる」
健吾君はそう言って、慣れた手つきで弦を取り外しだした。
え……
ぽかーんとなって健吾君を見た。
健吾君、あたしが入るの、反対だったよね?
なんで助けてくれるの?
これを機に、散々あたしを痛めつけてグループから外すことだって出来るのに。
「あの……」
あたふたするあたしに、
「黙って見てろ。
弦くらい自分で変えないと」
ぶっきらぼうにそう言って、健吾君の鞄から新しい弦を取り出した。
そして、それを丁寧にあたしのギターに張る。
健吾君、慣れているんだな。
そうだよね、上手だったもん。
健吾君はきっと何でも出来るけど、あたしは何も出来ない。
これだったらボーカルのほうが良かったよぉ。
だけど、ボーカルだったらさすがに歌声でバレちゃうよね、あたしが柊でないこと。