柚と柊の秘密





「あた……お、俺、教室戻るね」




あたしはそう言って、おもむろにギターを奪い返す。

健吾君が握っていたギターは、ほんのりと温かかった。

そして、




「……っ!!」




練習でボロボロになって、その上切れた弦が刺さった指が悲鳴を上げた。

あたしは思わず傷口を握る。





「お前……」




健吾君は怪訝な顔で、あたしの手を見る。




「だ……大丈夫だからぁ!」




慌てたあたしは手を後ろに回し、持っていたギターは激しく地面に落ちた。




ドガン……



大きな音と、ブーンと弦が鳴る音が響いた。

はぁー。

もう踏んだり蹴ったりだ。

健吾君、とうとう嫌気が刺すだろうな。

バンドメンバーが初心者で、親の七光りで、弦すら張り替えられなくて、そしていちいち怪我をする。

あー、もうやだ……。



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