柚と柊の秘密
「無理するな」
健吾君はあたしの手を握ったまま、静かに口を開く。
無理するなって言われても、あたしを煽ったの、健吾君でしょ。
訳わかんないよ。
でも、健吾君に反発することなんて出来ず、ただあたしは口を閉じる。
だけど……
「……悪かった。
お前のこと、酷く言って」
その、予想外すぎる言葉に耳を疑う。
そしてあたしは、健吾君の綺麗だけど無表情の顔を、さらにまじまじと見た。
「お前はいつもチャラついていて、今回だって目立つためにギターするのかと思っていた」
いや……そうだよ。
柊の考えなんて、所詮そうだ。
「だけどお前……意外と努力家なんだな」
「え?」
「一日で指が切れるまで練習する奴がいるか?」
「ご……ごめんなさい」
思わず謝っていた。
なんだか健吾君に責められているようだったから。
変な方法で練習するからだ。
指が切れたら、今後練習出来ないだろ。と。