柚と柊の秘密



だけど健吾君は、さらに意外な言葉を吐く。




「お前のギター、悪くない。

むしろ、二日目なのによく頑張ってる」




な……何言ってんの?




「お前には、本当に才能があるのかもしれない」




あたしに……才能?




いつも柊の陰に隠れていた。

スポーツ万能で、イケイケな柊の陰に。

あたしなんて平凡で、特技なんてないと思っていた。

今回のギターだって、ダメダメだと思っていたよ。

でもね、健吾君にそう言われて素直に嬉しい。

自惚れかもしれないけど、頑張る気になってきたよ。




超単純なあたし。


健吾君の言葉で、文化祭までにどうにかなると思ってしまう。

それほど嬉しかったんだよ、健吾君に認められたの。






「それじゃ、お……俺、続けてもいいの?」




健吾君に聞くと、健吾君はぷいっとそっぽを向く。

そして告げた。




「誰が辞めろなんて言った?」



「じゃ……じゃあ……」



「……俺はお前を完全に信頼しているわけじゃない。

ただ、少し見直しただけだ」





分かってる。

いい気になっちゃ、駄目だよね。

でも、あたしを断固拒否していた健吾君に少しだけ認められたみたいで。

すごくすごく嬉しいんだ。

あたしね、才能ないと思っていた。

だけど、実は才能あるのかな。

……努力するという才能。




< 89 / 363 >

この作品をシェア

pagetop