柚と柊の秘密
だけど健吾君は、さらに意外な言葉を吐く。
「お前のギター、悪くない。
むしろ、二日目なのによく頑張ってる」
な……何言ってんの?
「お前には、本当に才能があるのかもしれない」
あたしに……才能?
いつも柊の陰に隠れていた。
スポーツ万能で、イケイケな柊の陰に。
あたしなんて平凡で、特技なんてないと思っていた。
今回のギターだって、ダメダメだと思っていたよ。
でもね、健吾君にそう言われて素直に嬉しい。
自惚れかもしれないけど、頑張る気になってきたよ。
超単純なあたし。
健吾君の言葉で、文化祭までにどうにかなると思ってしまう。
それほど嬉しかったんだよ、健吾君に認められたの。
「それじゃ、お……俺、続けてもいいの?」
健吾君に聞くと、健吾君はぷいっとそっぽを向く。
そして告げた。
「誰が辞めろなんて言った?」
「じゃ……じゃあ……」
「……俺はお前を完全に信頼しているわけじゃない。
ただ、少し見直しただけだ」
分かってる。
いい気になっちゃ、駄目だよね。
でも、あたしを断固拒否していた健吾君に少しだけ認められたみたいで。
すごくすごく嬉しいんだ。
あたしね、才能ないと思っていた。
だけど、実は才能あるのかな。
……努力するという才能。