風と雪
「ソウダ。2年前のオマエは無力ダッタ。だから、猶予をヤッタ。今はそうではナイ。オマエは“天界の兵士”に選ばれた名誉ある人間ダ。」
「フォルクハルトに何するつもり?」
「人間は黙ってイロ。ワタシはこの兵士と話しているンダ。」
「私にだって、聞く権利は」
「雪蘭。」
怒る雪蘭をフォルクハルトは嗜める。
「賢明ダ。」
ウィンディアは笑う。
「天界の兵士とは何ですか?何故、私なのですか?」
「天界の兵士。それは天界で神に仕える我ら天使と同じモノ。だが、根本的に違うのは、生きた人間であるコトダ。我ら天使と同じく魔族を払うモノだが、天属の加護がツイテイル。」
「つまり、その加護を使って魔族を倒すことが取引条件。」
「アァ。もし、断ればオマエは力を失ウ。」
フォルクハルトはその言葉を聞いて、雪蘭を見た。
「断りなよ。」
心配する彼女の表情を見て、優しく微笑んだ。
「天界の兵士……いいでしょう。」
そう言うと、雪蘭から体を離してウィンディアを見据える。
「加護というのは何ですか?」
「その能力ダ。まだ、オマエは本質を引き出せてイナイガ。」
「本質……」
「進化、トハ、人間の特権ダナ。」
そう言うとウィンディアは手を翳した。
「我が主よ。……此処に、兵士の誕生を宣言する。」
そう言うと風が2人を包んだ。
「——っ!!」
雪蘭は思わず目を閉じた。
「フォルクハルト!!」
その叫びに答えるものはない。
「煩いなぁ。」
金髪の女性が横切る。
「ねぇ、黙ってくれない?」
ニヤリと口角を上げて女が雪蘭を突き飛ばす。
その目は金色。
背中には黒い羽があった。
「アタシはアイリーン。よろしく。」
“いぇい”とピースサインを見せて笑った。
「天界の兵士なんて、こっちは大メーワクだっての!死んじゃえ。」
アイリーンはウィンディアへ掌を向ける。
掌から衝撃波でも出たように、空間が震えた。
それを跳ね返したのは風。
大きな台風のような風力で、全体の風の流れが変わった。
「ふーん。」
アイリーンは面白そうにニヤリと笑う。
「いいもん。コッチには人質があるし。」
そう言って雪蘭を掴んだ。
「はなして!!」
雪蘭はじたばたと暴れる。
「ウザイから暴れんな。」
「うっ!」
アイリーンは鳩尾を殴り、雪蘭を気絶させる。
「天界の兵士さん、この女がどうなってもいいのかな?」
「許さない。」
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