風と雪
風の中からフォルクハルトが現れる。
ウィンディアは傍観を決め込んでいる態度だ。
雪蘭が死のうとどうでもよさそうだった。
恐らく、フォルクハルトも死ぬことになろうと彼女は傍観し続けるだろう。
それを見た雪蘭とフォルクハルトは彼女へ失望するでもなく、初めから期待していなかった様子だ。
「そう。」
アイリーンはフォルクハルトの反応が面白いのか、愉快そうだ。
「では、その権限を放棄してくれない?」
「放棄すれば、開放してくれるのですか?」
「考えてあげる!」
問いに無邪気な笑顔で答える。
まるで、児戯でもするような顔だ。
「確証がなければ従わない。」
「いいよ?困るのはアタシじゃないし。」
アイリーンは余裕そうだ。
「堕天使であるアタシ達はアンタ等天界の兵士が天敵なの。それを1人でも減らすことが生き残る術。」
「天使よりも、ですか?」
「天使はアタシ達を殺せないよ。“魂を消滅させる”役目以外はね。」
「ベラベラ喋るんじゃナイ。」
ウィンディアは秘密を守ろうとするように口を挟んだ。
「別にいいじゃん。どうせ、ペネムに会ったらわかる話だし。」
「会わせる予定はナイ。時期が来てイナイ。」
「早かれども、同じ。でしょ?」
アイリーンは楽しそうだ。
「そんなこというなら、力づくでやれば?」
「堕天使狩りは騎士と兵士の役目ダ。」
ウィンディアは羽根を広げる。
「その割に、本気で行く勢いね。天使が羽根を見せる時は、神力が高まった時。常に神力が充電される天界と違って、ここでは温存のために器に入る。罪人のように。」
「あんなのと一緒にスルナ。」
「罪人の器は罪人の力の半分を持ったもの。サタンとレヴィアタンの例外を除いて、均衡を保つためにある。……天使の場合は、霊体が入る器。即ち、生きていた頃の死体に入り地上へ転送される。」
アイリーンはフォルクハルトに言う。
「では質問。その死体はどこに保存されるでしょう?」
「……墓場?」
「ブッブ〜!不正解。」
「では、天国?」
「おしい!」
クイズをするアイリーンは楽しそうだ。
「正解は“方舟”でした!」
その答えに“何を言っているんだ”という表情をした。
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