吸血鬼、頑張ります。



「お〜さま。今度はお〜さまが鬼だよ〜」


「ま、待ってよ!そ、そんなに走ったら、ぜぇぜぇ・・・あ、危ないよ・・・」


息を切らせて、沙織を追う鉄観音は、改めてゾンビの身体能力の高さに愕然としていた。


吸血鬼の王であっても、生身の人間である鉄観音は、小学生の虔属である沙織を追うのに、息も絶え絶えであった。


「くふっ!なんちゅう、なんちゅう速さだ!」


軽々と、山道を駆け抜けて、木々を飛び越える沙織。


落下して、足が取れても、直ぐに再生する。



運動不足の鉄観音には、過激な修行に成っていた。


ひよりに至っても同じである。


鉄観音の血液を定期的に摂取して、吸血鬼本来の力を発揮し出したひよりは、数々の技術を覚醒し、今やイブに次ぐ能力を有していた。


かくれんぼでは小動物に変化して、鉄観音の目を欺き、見付からない。


鬼ごっこでも、凄まじい身体能力で鉄観音から逃げてしまう。



「こんなの、捕まえられる訳無いじゃん!!」


鉄観音は最後まで鬼のままで居ることが、多かった。



香織とイブは、連れ立って湖で泳ぐ。


香織はゾンビになる前、特待生の授業料免除で高校に通って居たほどの優等生だった。


容姿は早くから苦労をしていたせいか、同級生よりも大人びて見えた。


目鼻立ちが整い、小顔である香織がモテないわけはなく、
大人びた体躯も相まって、憧れる男子も多かった。


しかし、早くから苦労を重ねたせいか、性格は姉御肌で、外見に似合わず活発な少女である。

運動も得意な女子高生だった。



水着をまとい、湖で泳ぐ香織。

浮き輪にもたれながら湖を漂うイブ。


イブの体躯もグラマラスである。


余りの幼い顔とのギャップが、ある種の色気を醸し出す。


真っ白い肌に、背徳の危険を感じさせる。



鉄観音は、彼女達に翻弄されながらも、
今まで味わった事のない穏やかな気持ちを噛み締めていた。

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