吸血鬼、頑張ります。
鉄観音が眠る寝室には、鉄観音を拘束する頑丈なベルトが備え付けられたベッドがある。
毎夜、余りの寝苦しさに悪夢を見ることしかり、なのだが、
イブは頑なに拘束を緩めようとはしない。
何故なら、
前にも記したが、鉄観音は眠っている時にフェロモンを放出する。
家中の虔属は、皆その香りに反応し、鉄観音のベッドに集まる。
文字通り、ハーレム状態の鉄観音のベッドで、トリップした虔属は、淫靡な姿で鉄観音に奉仕をする。
その状況を危惧したイブによって、ほぼ、鼻と口しか出していない状態のまま、拘束されて眠らされていた。
「イブちゃん、勘弁してくれよ〜・・・暑いんだよこれ〜・・・」
「王は、バカみたいな顔で、汚い寝顔を曝しながら寝ていれば良いのですが、
他の女の子達は違います。
未だ完全覚醒していない状況で、ハーレムを作ると言う事は、
王の大切な種子を消失しかねません。
いずれ、王に相応しい伴侶が出来た場合に、種子を残して置かなければ、代替わりに於いて、吸血鬼の一族は滅んでしまうのです」
「じゃあ、せめて扉に鍵を掛けるとか、そう言う対策の方が助かるんだけど・・・」
「彼女達の力を知らないわけでは有りませんよね?
幸い眠っている状態なので拘束器具までは破壊しませんが、この部屋の扉など、瞬時に破壊してしまいますよ」
「そ、それはそうだろうけど・・・」
「暑くて、寝返りも打てず、辛いのは解りますが、王の為なのです。我慢して下さい」
イブはそう言って、いつもの様に拘束器具をセットした。
実際は拘束器具など、必要ない。
ハーレムと言っても、鉄観音と添い寝するくらいなのである。
しかし、画的にイブには無理だった。
美しくないのである。
鉄観音というおっさんと、可愛い美少女達が一緒に寝ている姿が、
生理的に無理なのであった。
これは、吸血鬼も人間も同じ感覚なのである。