吸血鬼、頑張ります。



ぐいぐいと体を引かれていく赤組。

香織に巻き付けた綱が少しずつほどけていく。


中央の目印は敵方のビクトリーラインに数センチに達する。

もう負けたかと思った瞬間、
香織の体に異変が起きた。

綱がすこぶる軽くなったのだ。


「えっ?な、何これ・・・」
香織は驚いた。


力を入れるまでもなく、さっきまで白組に引かれ続けた綱は、まるで自動でルアーが巻かれるように、
赤組の陣地へと手繰り寄せられる。

香織は何の苦もなく、ただ綱を引くだけで、
白組が勝手に倒れていくのだった。



余裕で赤組ビクトリーラインまで綱を引いた赤組と香織。



赤組は1回戦を完勝した。


観客席から拍手と歓声が響く。



『只今の勝負は、赤組の勝利です!』


アナウンスが流れた。


赤組は歓声に包まれた。


「え?何だったのさっきの?」

クラスメートに香織は聞いた。


「香織さんに、赤組全員の力を集結させた魔導を使ったのよ」


クラスメートはそう答えて、香織を抱きしめた。

「よし!まず1勝ね。香織さん!次も頑張るわよ」


クラスメートの声を聞きながら、
魔導と魔法の凄さを改めて感じる香織だった。
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