吸血鬼、頑張ります。
綱引き2回戦は、厳かに始まった。
白組の静かな闘志が、沸々と感じられる。
そして、スタートの火薬ピストルの合図が鳴り響く。
またもや綱はキレイに張られた。
緊張の糸が、綱に宿ったかのように見えた。
魔導が混沌と会場を包み込む。
一回戦よりも静かに成った会場は、固唾を呑んで試合を見守っていた。
今度、最初に仕掛けたのは赤組だった。
何とあろう事か、沙織とひよりのクラスが赤く光っている。
すると直ぐに、白組高等部三年生のクラスも光りだした。
こちらも魔導が定まったようだ。
互いに魔導が定まって、勝負は一回戦よりも早く動き出した。
『赤組の魔導が若干早いようです』
アナウンスがそう告げた。
赤組が仕掛けた魔導は、
「沙織とひよりに力を集中させる」と言う魔導だ。
香織に対して行った魔導を真似して、次はこの初等部の吸血鬼二人に力を集中させる作戦に出た。
対して白組は、
「白組高等部全員に、通常の3倍の力を発揮できる魔導」を、仕掛けた。
白組の力が強力に増して綱を引き出す。
単純な魔導を高倍率で掛ける事は、時間的に大幅なロスがある。
短い時間で素早く結果を出すためには、最低限の魔導で最大の効果を出さなくてはならない。
しかし、白組に動き始めた綱は動きを止めた。
沙織とひよりは、溢れ出す力を使い、一気に綱を赤組のビクトリーライン近くまで引き出す。
吸血鬼の力が更に増幅され、二人はじゃれる様に、遊ぶように綱を引っ張っていた。
『おおっと!?又しても赤組の勝利に成ってしまうのか?
白組頑張ってください!!』
高等部に所属する、学生達の力を3倍にまで高めたのにも関わらず、
吸血鬼二人は物ともしない力で綱を引き続ける。
会場は大いに盛り上がりはじめた。
やがて、赤組のビクトリーラインを、綱の中央が通過した。