吸血鬼、頑張ります。
因みにトラックのドライブレコーダーには、その一部始終がホラー映画のように記録されていた。
所々、ノイズが混ざっているのがリアリティーを感じさせる。
その後運転手は、警察に一部始終を話して、ひき逃げ現場に戻るが、そんな痕跡は一つもない。
ただ、トラックの助手席のドアと窓にベットリと血がついているだけであった。
「一体、あの女は何だったんだ・・・」
暫くして運転手は仕事を辞めた。
その事故が起きた場所は、幽霊街道として有名になる事となる。
まあ、それは別の話。
「あ、お姉ちゃん戻ってきたみたい」
沙織は気が付いて手を振る。
鉄観音と沙織に挨拶をし、香織は二人に同行する。
「お姉ちゃん、腕が在って良かったね」
「うん。これで沙織の頭を撫でられるよ」
そう言って、香織は沙織の頭を撫でる。
沙織は気持ち良さそうに笑っている。
「あ、あの〜ハートウォーミングの所悪いんだけど、その会話はかなりヤバイからね」
鉄観音は姉妹に声を掛ける。
「王様に授かった新しい命
私達は満足しておりますが・・・」
「あ、いや・・・そう言う意味では無くて・・・
一応言っておくかな・・・
あのね、虔属に成ると確か俺と一定の距離の間に居ないと活動出来なくなるのね。
で、例え体を粉砕されても、その距離内なら再生して消滅はしないんだよ。
重要なのはここからなんだけど、普通の人には、肉片が集まって元に戻って行くように見えてるわけで、かなり気持ち悪いのね」
「だから無闇にスプラッターすると、
かなりのトラウマを見ていた人に植え付けてしまって、ヤバイからね」
二人は真面目に頷く。
「因みに俺は、スプラッターとかマジ無理なんで、
光らせてフワッとした感じに脳内変換させて見てるから平気なんだけど、
なるべく腕が落ちたから戻すみたいな奴は、やめてもらいたいんだよね・・・」
「で、どうなの?こんなおっさんと一緒に居られる?
勢いで君らを生き返らせたけど・・・
生理的に無理なら魂を解放する方向にするけど・・・」
鉄観音は二人に言う。
実の所、虔属なんてめんどくさいのだった。
「いえいえ!折角こんな素晴らしい体と、環境を与えていただけたのですから、
少しの王様の気持ち悪さ・・・。失礼。
煩わしさなど何でもありません」
香織は答えた。
「今、王様の気持ち悪さって言ったよね!?」
「ふふふ〜ん」
香織は鼻歌で誤魔化す。
「沙織はね〜王様大好き〜!!だって、生き返らせてくれたんだも〜ん!」
「ありがとう沙織ちゃん。じゃ、一緒に暮らそうか」
「あ、でも本当は、一緒に住むとかマジあり得ないけど、王様が可哀想だから一緒に住んであげる」
沙織を肩車する鉄観音は複雑な笑顔を見せるが、嬉しそうにはしゃいでいる沙織を見て、呟く。
「そうですか・・・。
気持ち悪くてすいませんね・・・」
香織も、楽しそうな妹の顔を見ていると嬉しくなった。
「じゃ、合意も得られたし、俺の実家に行くか・・・」
鉄観音は、両親が居ない、誰も住んでいない蕪木家に向けて歩き出した。