吸血鬼、頑張ります。
「う、う〜ん・・・」
鉄観音は実家のベッドで実に久しぶりに眠った。
思えば、中2の夏。
吸血鬼宣言を受けた鉄観音。
吸血鬼である事を告げた父親は、宣言と共に力を失う。
父親は一人の人間となり、母親と共に鉄観音の前から消えた。
元吸血鬼の王と新時代の吸血鬼の王が同じ場所で過ごす事は、固く禁じられていた。
無論、その事実を鉄観音は知らない。
自分は捨てられたと思っていた。
鉄観音は人の寿命が尽きてから、本来の鬼生が始まる。
つまりは今生きているのは命が尽きるまでの暇潰しでしかない。
なのでさほど本気で生きていない。
家を飛び出してぼろアパートで、アルバイトをしながら生きてきた。
実家に戻って来たのは10年振りだった。
殺風景な部屋は、子供の時となにも変わらなかった。
使用人は父の力の委譲により、全員が消えた。
つまりは虔属の消失である。
鉄観音自ら虔属を増やして、この城に君臨する事が両親の希望でもあった。
多数の虔属が居なければ、このだだっ広い城を管理する事は不可能なのだった。
やがて朝になる。
鉄観音は久しぶりに思い出に包まれて眠った。