吸血鬼、頑張ります。
荘厳な雰囲気を、朝靄と共に醸し出す風雲蕪木城。
深い森の奥深く、一度迷ってしまえば二度と出てはこられない場所に位置している。
地元の人は遥か昔から蕪木森と呼んで畏れていた。
いつの間にか沢山の使用人が城の中に住み、そしていつの間にか人が居なくなる。
そんな事を、何代も続けてきた蕪木家。
城に入って出てきた者は居ない。
何故なら、秘密を守るため吸血鬼の虔属にされてしまうからだ。
そんな蕪木城に、久し振りに台所に火が灯った。
「王様、朝食の準備が整いました」
広い食堂。
テーブルには白米。
「えっ!ご飯だけ?」
思わず鉄観音は声に出して言う。
「はい。食糧庫にはお米しか在りませんでしたので」
香織は顔色も変えず言う。
「・・・。」
「でも、お米は在ったんだね・・・」
鉄観音はご飯を口に入れた。
モソモソ白米だけを食べる。
「おうさま?おいしいですか?」
沙織が鉄観音の顔を覗き込んで言う。
「う、うん・・・。これはコシヒカリかな?美味しいよ」
「王様、ササニシキですが」
香織が注意する。
「あ、ササニシキね。この独特の粘りけね。うん、旨い」
白米だけをモソモソと食べる。
「つーか、ご飯だけかい!!そんで種類なんて、わかるかい!!」
鉄観音はテーブルに顔を埋めて、涙した。