吸血鬼、頑張ります。
「ねえ。最近話題の都市伝説知ってる?」
女子高生がバーガーショップで話をしている。
「焼身自殺した姉妹の遺体が姿を消して、ずっと見つからないんだけど、遺体が病院から無くなった時間と同じくらいに、あの国道を走ってると血まみれの女が・私の体知りませんか〜・って運転手に聞いてくるとか言うやつ」
「あ〜。最近話題だよね。焼身自殺した人って、椿女子高の人らしいし」
「え、椿って隣街じゃん。あの進学校の椿でしょ?」
「うん。なんか椿行ってる友達に聞いたんだけど、結構可愛い娘だったんだけど、付き合い悪くて浮いてたみたい」
「へぇ〜」
「特待の奨学生で、頭良かったみたいなんだけど、家が複雑だったらしくて、妹と一緒に自殺して。だけど、二人とも遺体が無くなっちゃったらしいよ」
「うわ・・・超怖いじゃん、それ」
「アパートに住んでた別の人も行方不明なんだって」
「マジ?」
「うん、マジで」
そんな二人の会話が別の会話に変わるまで、聞き耳を立てていた女が居た。
東洋魔導師組合の魔導師である日野みさきである。
都市伝説をリークしたのは、実はこの日野みさきだった。
人々に注意を促し、同時に情報を捜す。
派生した話から、真実に辿り着くのは、別段珍しい話ではない。
自分の持つ情報と、他人の情報を精査する時に魔導師がよく使う手口である。
「う〜ん・・・かなり広まっているな・・・」
みさきは満足そうに席を立った。
「そろそろ、噂を確かめようと動くやつがいるだろう。次の情報を流すかな・・・」
ゴミ箱にゴミを捨てながら、みさきは独り言を言った。