吸血鬼、頑張ります。
「ハルシュバーン様。もっと腰を入れて割って下さい」
「解っておりますよイブちゃん!
力仕事なんか今までやって来なかったからさ・・・」
ぜぇ〜ぜぇ〜言いながら鉄観音は斧を振るう。
薪で家の火力を補う以上、大量の薪を必要とする。
力仕事全般は、鉄観音の仕事だった。
「それと、イブちゃんって言うのは、止めてください!」
「イブちゃんは、イブちゃんだよ」
「もう・・・。なんか、恥ずかしいじゃないですか」
サザンクロス・クリスマスイブは頬を染める。
「でも、イブちゃんは中学生みたいに幼いけど、一体年齢は幾つくらいなんだい?」
「王!いくらなんでも女性に年齢を聞くのは良くないですよ!」
「ああ、ごめん。ごめん」
ぶしつけな質問をして、鉄観音は頭を掻く。
「まあ、隠す事でも無いので。2115歳でしょうか?」
「2115歳!!!?ほぼ太陽暦と一緒!?」
「ええ、暦と言う概念は人の特有なものです。同時に妖怪の概念も生まれたのでしょう。」
さらっと、凄いことを言うサザンクロス・クリスマスイブ。
「もともとは人なの?」
「太古日本には巫女が国を動かしていました。
西洋からやって来た吸血鬼が、アジア全土の妖怪を倒しまして、日本の巫女と交わりました」
「うん。それで?」
「もともと居た子供の私は、吸血鬼と巫女の間に生まれた新たな王に、虔属としてお仕えすることになりました」
「うん」
「生きたまま血を吸われまして、不死身属性と不老不死属性で、尚且つ初めての虔属と言う特権で吸血鬼の道標役になりました」
「うわ〜・・・。嘘みたいだけど、現実なんだね・・・」
「これだけの種族や生命が存在した星には、人が理解できない概念も沢山存在しております。
見えるものだけを肯定する事は、人の欺瞞であり傲慢でしかありません」
「おお・・・人類学や哲学までも否定してしまうと・・・」
「否定では在りません。人間は殆んどが我々を見る事は出来ません。
我々吸血鬼は幸い人と同じ形をしている為、人間に認識されますが、根本は人では在りません」
サザンクロスは淡々と話す。
そこに香織が現れた。
「王様。話があるのですが、お取り込み中でしたか?」