吸血鬼、頑張ります。
「薪を探して〜山をいく〜♪深い森を〜歩いてぇ〜♪」
下手なオリジナル曲を歌い、鉄観音は森を歩いていた。
蕪木森の中で、薪を探していた。
「気持ち悪い森だよなぁ・・・。早く薪を拾って帰ろう」
「それにしても、オール電化の時代に薪拾いって・・・。日本昔話かって」
森の独特な空気に怖じ気づきながら薪を拾っていると、自然と独り言が多くなる。
「熊とか動物ならまだましだけど、こういう森は結構有るだろう・・・あれ・・・」
危惧していたのは自殺者を見つけた時だった。
「絶対無理だよ・・・」
虔属を作れるなどと微塵も思っていない鉄観音は、ひたすらそう言う場面に出くわさない事を祈るだけだった。
しかし、ここは蕪木森。
鳥の鳴き声も聞こえない結界の森である。
薪を背中に背負い、鉄観音は森を歩いていた。
「腹が減ったな・・・」
サザンクロス・クリスマスイブが何故か米を好む為、家の食料庫には米がふんだんに保管されていた。
香織の提案で、おにぎりを持って薪拾いに来た鉄観音は、丁度手頃な大木と石を見付けて、そこでご飯を食べる事にする。
「おっ?座りやすそうな石がある。よしよし、ここで食べよっかな」
薪を下ろして、おにぎりの包みを開けるとき、何かが視界に入った。
「ん?何かが枝にぶら下がってるな?」