吸血鬼、頑張ります。



「薪を探して〜山をいく〜♪深い森を〜歩いてぇ〜♪」


下手なオリジナル曲を歌い、鉄観音は森を歩いていた。


蕪木森の中で、薪を探していた。


「気持ち悪い森だよなぁ・・・。早く薪を拾って帰ろう」


「それにしても、オール電化の時代に薪拾いって・・・。日本昔話かって」


森の独特な空気に怖じ気づきながら薪を拾っていると、自然と独り言が多くなる。


「熊とか動物ならまだましだけど、こういう森は結構有るだろう・・・あれ・・・」


危惧していたのは自殺者を見つけた時だった。


「絶対無理だよ・・・」


虔属を作れるなどと微塵も思っていない鉄観音は、ひたすらそう言う場面に出くわさない事を祈るだけだった。



しかし、ここは蕪木森。
鳥の鳴き声も聞こえない結界の森である。



薪を背中に背負い、鉄観音は森を歩いていた。

「腹が減ったな・・・」


サザンクロス・クリスマスイブが何故か米を好む為、家の食料庫には米がふんだんに保管されていた。


香織の提案で、おにぎりを持って薪拾いに来た鉄観音は、丁度手頃な大木と石を見付けて、そこでご飯を食べる事にする。

「おっ?座りやすそうな石がある。よしよし、ここで食べよっかな」


薪を下ろして、おにぎりの包みを開けるとき、何かが視界に入った。


「ん?何かが枝にぶら下がってるな?」

< 54 / 138 >

この作品をシェア

pagetop