吸血鬼、頑張ります。
枝振りの立派な、それはそれは見事な大木の枝を目で追う。
明らかに不自然な、景観にそぐわないビニールの白いヒモがぶら下がっていた。
「う、うわぁっ!?ま、まさか!?」
鉄観音はたじろいだ。
しかし、ヒモの先には何も見当たらなかった。
「うわあ〜良かった〜・・・。首吊りかとおも・・・」
不意にヒモが垂れ下がる足下を見た。
「う、うぎゃあああっ!!」
そこには少女の姿があった。
鉄観音は後退りし、尻餅をついた。
「な、なんだよ!!なんでこんな所で寝てるの?」
尻餅をつきながら、震える声で少女に話し掛けた。
しかし、返事はない。
鉄観音は恐る恐る、寝ている少女の元に近付いた。
肩を叩いて、反応を確かめる。
「あ、あれ?もしかして・・・。し、死んでる!?」
鉄観音は青ざめた。
救急車を呼ばなくては。
と、ポケットから携帯を出す。
「けっ、圏外!!」
無情にもアンテナは立っていない所か、業務的な圏外の文字を誇らしげに表示していた。
「うわっ!超田舎!マジで何処の秘境だ!!」
忌々しく携帯をポケットに突っ込む。
「こ、こうなったら・・・」
倒れて、息をしていない少女を鉄観音は背中に背負って、蕪木森を歩き出した。