吸血鬼、頑張ります。
実は、佐々城ひよりは、死んではいなかった。
心肺が停止し、呼吸が止まっては居たが、自殺には失敗していた。
石を蹴って、体重を掛けて、ビニールのヒモが首を締め付けた時、一瞬だけヒモに力が加わり、気を失った。
結果、そのまま地面に落下して、仮死状態になっていた。
そんな事など知らない鉄観音は、ひよりを安置している部屋に入ってきた。
「イブちゃん。本人は色々あって、死にたかった訳でしょう?それを無理矢理生き返らせるって、あんまり喜ばれないんじゃないの?」
鉄観音はイブに聞く。
「いいえ、王。先程も言いました通り、この森を選ぶと言う事は、潜在意識の中にまだ生きたいという願望がある証拠なのです」
「環境が変わり、もう一度やり直せるのなら生きたいと言う人間の欲求は、死んでも変わるものではありません」
「それに生き返らせても、王ならば再び魂を肉体から解放できるのですよ?」
「あっ!そうだったね。香織ちゃんと沙織ちゃんにも同じ事言ったんだったっけ」
鉄観音は思い出した。
「しっかりして下さいよ。大体王は、吸血鬼の自覚が足りません!もっとご自分の事を理解して頂きたい!」
イブは憤慨する。
「ああ、ごめん、ごめん」
図星を突かれ、鉄観音は頭を掻いた。
「よし!じゃあ申し訳ないけど、この女の子に牙を突き立てさせて貰おう・・・」
ここだけを聞くと、まさにロリコン変態野郎であった。