吸血鬼、頑張ります。
考え得る限り、鉄観音の人生においてこの短期間に女性の、
しかも少女の、
遺体とは言え、首筋に口を付けると言う機会が、三度も訪れると言う事は、考えようもなかった。
実際、あんたは吸血鬼ですよ。
と、
言われていたにも係わらず、30も半ばを過ぎても虔属を作らず、自分の鼻血を管を通して飲んでいたほどのヘタレ吸血鬼である。
付き合った女性もそりゃあ〜沢山居た。
が、
彼の純情(貞操)を、奪う関係には発展しなかった。
つまりは童貞なのである。
好きな女性はデリヘル嬢のミルクちゃんであった。
素人童貞。
後腐れ無い商売の関係。
それを良しとしていた。
吸血鬼活動が、実際は面倒臭くて避けていた節がある。
それがここに来て、気まぐれから始まってしまった吸血鬼生活。
ついつい情にほだされて、自殺を図った姉妹を助け、長らく戻らなかった実家に戻れば妖怪執事に罵倒され、森を歩けば又しても遺体を拾って来てしまう。
鉄観音が意図していない吸血鬼の本分を、真剣に、真面目に頑張らなくてはならなくなってしまった。
「う〜ん・・・何故、こうなってしまうんだろうか・・・」
佐々城ひよりの仮死状態の遺体の前で、素に戻ってしまった鉄観音であった。