吸血鬼、頑張ります。
鉄観音はパクッと口を開けてひよりの首筋に口を付ける。
「じゃ、いくよ・・・」
そう言って、ひよりの首筋に牙を立てた。
グチュ・・・。
鈍い、肉が破裂する音が部屋に響いた。
その時だった。
鉄観音は今までに感じた事の無い奇妙な感覚に襲われる。
口の中に血液が大量に入り込んで来たのだ。
瞬間。
「いっ!痛いぃっ!!!」
凄まじい痛みで、ひよりはガバッと起き上がった。
「のわあっ!!」
鉄観音は突然起き上がったひよりによって、後ろに倒れる。
首から血を吹き出しながら、ひよりは絶叫する。
「あっ!ダメだよ!動いちゃ!!」
鉄観音は慌ててひよりを抑えようとする。
「な、何なんですかあなた!私を殺す気なんですか!?」
ひよりは精一杯抵抗したが、首から大量の血が溢れ出している為に、徐々に意識が飛んでいく。
「こ、この・・・。ひ、ひとご・・・ろ・・し・・・」
ひよりは動かなくなった。
「え〜、どういう事!?」
動揺を隠せない鉄観音は、ひとまず、ひよりの首に噛み付いて、血を吸ってみた。
生の血は、鉄の味がするが、牙から溢れ出す吸血鬼化エキスと交わるとき、えも言われぬ上質なブドウ酒のように、鉄観音の脳みそに凄まじい衝撃を与えたのだった。
中毒性の強い悪魔の薬のように、鉄観音はひよりの血を吸い続けた。